ロンドンのギャラリーで展示する — 持ち込みの実務
ロンドンで展示したい作家の方から最初に出るのは、たいてい有名なギャラリーの名前です。しかし現実的な入口は別のところにあります。日本関連の展示実績があり、企画提案を受け付けている会場から始めるほうが、通る確率も費用も大きく違います。
日本関連の実績がある会場
Daiwa Anglo-Japanese Foundation(大和日英基金)
メリルボーンにある Daiwa Foundation Japan House のギャラリー。日英の交流をテーマにした展示を無償で開催しており、日本人作家の個展・グループ展の実績が多数あります。入場無料、平日開館、二部屋構成。
企画提案を受け付けているため、英国での実績がまだない日本人作家にとって最も現実的な入口の一つです。dajf.org.uk
Japan House London
ケンジントン・ハイストリートにある、日本政府が設立した文化発信拠点。2018年開館。企画展のレベルが高く露出も大きい一方、企画は基本的に館側が主導するため、持ち込みでの展示は容易ではありません。japanhouselondon.uk
White Rainbow
W1・モーティマーストリートにあった、日本の現代アートを専門に扱うギャラリー。日本では評価されているが英国では知られていない作家を紹介してきました。日本人作家の英国での展示史を調べる際の重要な参照先です。archive.white-rainbow.art
Crafts Council / Somerset House
Crafts Council は工芸分野で英国最大の影響力を持つ組織で、Collect の主催団体でもあります。工芸を志向する作家は、まずメンバー登録から検討する価値があります。craftscouncil.org.uk
持ち込みに必要な資料一式
英国のギャラリーは、作品そのものより資料の完成度で判断している部分がかなりあります。最低限、次の五点が必要です。
- 作品画像 — プロが撮影したもの。白背景または一貫した背景。ディテールカットも。スマートフォンで撮った写真は、それだけで検討対象から外れます
- 作家ステートメント — 英語、A4一枚。何を、なぜ作っているか。翻訳調ではなく、英語として自然であること
- CV — 展示歴、受賞歴、所蔵先、教育。年代順で、誇張しない
- 価格リスト — ポンド建て。サイズと素材を併記
- そのギャラリーとの接点を示す一文 — 「貴ギャラリーで展示された◯◯氏の作品と、素材への向き合い方で通じるものがあると考えています」といった具体的な言及
返信されない売り込みの共通点
ギャラリー側の視点で見ると、返信されないメールには共通点があります。
- 宛名が「Dear Sir/Madam」。 担当者名を調べていないことが一目で分かります
- そのギャラリーである理由が書かれていない。 一斉送信だと即座に分かります。上の五点目が抜けているケースです
- 本文が長い。 制作理念を数百語書くより、画像3点と3行のほうが読まれます
- 添付が重い。 大容量の添付は開かれません。リンクを使ってください
- 何を求めているのかが不明。 個展か、グループ展か、取扱か。要望が書かれていないと判断できません
段階を踏む
実績のない状態でいきなり個展を依頼しても、多くの場合通りません。次の順序のほうが現実的です。
- グループ展に参加する — 費用と risk が分散され、最初の英国での展示歴になります
- London Craft Week の公式プログラムに、会場と組んで登録する — 分散開催形式のため参入しやすい
- その実績と写真を持って、個展を打診する
この順序であれば、初年度の費用を抑えながら二年目以降に本命へ進めます。
費用の考え方
ギャラリーとの関係には大きく二種類あります。コミッション型(売上の一定割合をギャラリーが取る。作家側の初期費用は小さい)と、会場費型(作家が会場費を払う。売上は全額作家)。後者は「レンタルギャラリー」と呼ばれ、英国にも存在しますが、キュレーションの信用が付かない点は理解しておく必要があります。
加えて、作品の輸送費、保険、什器、案内状、オープニングの費用が発生します。展示後に持ち帰る場合はATAカルネという一時輸入の仕組みが使え、関税と輸入VATを回避できます。
よくある質問
この分野で実際によくいただく質問です。
ロンドンで日本人作家が展示できるギャラリーはありますか?
Daiwa Anglo-Japanese Foundation(大和日英基金)のギャラリーは、日英交流をテーマにした展示を無償で開催しており、日本人作家の個展・グループ展の実績が多数あります。企画提案を受け付けているため、英国での実績がない段階での最も現実的な入口の一つです。Japan House London は企画が館側主導のため持ち込みは容易ではありません。
ギャラリーに持ち込むとき何を用意すべきですか?
プロが撮影した作品画像、英語の作家ステートメント(A4一枚)、CV(展示歴・受賞歴・所蔵先)、ポンド建ての価格リスト、そしてそのギャラリーの既存取扱作家との接点を示す一文です。最後の一点が抜けている売り込みは一斉送信だと即座に分かり、ほぼ確実に返信されません。
なぜ売り込みに返信が来ないのですか?
典型的な理由は五つです。宛名が Dear Sir/Madam になっている、そのギャラリーである理由が書かれていない、本文が長すぎる、添付が重くて開かれない、何を求めているのか(個展か、グループ展か、取扱か)が書かれていない。制作理念を数百語書くより、画像3点と3行のほうが読まれます。
レンタルギャラリーはどうですか?
英国にも会場費を作家が払う形態は存在し、売上は全額作家のものになります。ただしキュレーションを経ていないため、経歴としての信用は付きにくくなります。実績作りが目的であれば、グループ展や London Craft Week の公式プログラム登録のほうが有効です。
作品の輸送はどうすればよいですか?
展示後に持ち帰る場合はATAカルネという一時輸入の仕組みが使え、関税と輸入VATを回避できます。販売する場合は正式輸入となり関税とVATが発生します。この判断を誤ると想定外の費用が出るため、企画段階で確定させる必要があります。